@title ケインズ『みんなが節約するほど、みんな貧乏になるんだよ』/倹約のパラドックス @thumb みんなが*節約*するほど//みんな*貧乏*になる @thumb_label 経済学者『ケインズ』 @thumb_sub 日本が30年止まった本当の理由 @thumb_image ../assets/img/keynes_1929.jpg @thumb_bg #8b1a1a @layout lecture @credit 写真: John Maynard Keynes (1929) — Wikimedia Commons, パブリックドメイン # ガバラボ型 (教養解説): ナレーター1人 (声=青山龍星)、いらすとや + 大きな文字 + 引用カード。 # 事実と出典: script/facts/keynes.md。いらすとや 12点 (1作品20点まで無料)、出典一覧: assets/irasutoya/credits.tsv # 写真: Wikimedia Commons "John Maynard Keynes 1929.jpg" (パブリックドメイン) [bgm] ../assets/sfx/bgm_loop.wav [quote] 経済学者『ケインズ』 | みんなが*節約*するほど、//みんな*貧乏*になるんだよ | 『雇用・利子および貨幣の一般理論』1936年 | ../assets/img/keynes_1929.jpg ナレーター: 「みんなが節約するほど、みんな貧乏になる」。1936年、世界恐慌のまっただ中で書かれた本の主張です。 ナレーター(考え): 節約は美徳のはずなのに、なぜ貧乏になるのか。この話は、日本の「失われた30年」と、あなたの財布につながっています。 ナレーター(笑顔): 最後には「じゃあ自分はどうすればいいのか」まで話します。 [slide] ケインズとは何者か | 1883年〜1946年 イギリスの経済学者 [point] 『一般理論』1936年 — 現代マクロ経済学の土台 ナレーター: ジョン・メイナード・ケインズ。1883年生まれ、イギリスの経済学者です。 ナレーター: 1936年の『一般理論』。主張は「不況のときは、国が借金してでもお金を使え」。 [point] 「不況のときは国が*お金を使え*」を理論にした人 ナレーター: 今の世界中の景気対策は、ほぼこの本の子どもです。 [point] 自分でも株や為替を売買。大学の基金運用も担った ナレーター: 机の上だけの人ではありません。自分でも株や為替を売買し、ケンブリッジ大学の基金の運用まで任されていた。お金の現場を知っている学者でした。 [slide] 倹約のパラドックス | 正しいことを全員がやると、おかしくなる [image] ../assets/irasutoya/money_chokinbako.png | あなたが外食を1回やめて、1万円を貯金する ナレーター: 話を単純にします。あなたが今月、外食を1回やめて1万円を貯金した。あなたにとっては100%正しい。 [image] ../assets/irasutoya/money_kyuryou_bukuro.png | その1万円は、誰かの売上であり、誰かの給料だった ナレーター(考え): でも、その1万円は、本当なら飲食店の売上になるお金でした。店員さんの給料になるはずだったお金です。 [telop] あなたの支出は、誰かの収入 | 2.6 ナレーター: あなたの支出は、誰かの収入。これが経済の大原則です。 [vs] 一人が節約=貯金が増える | 全員が節約=*給料が減る* | ../assets/irasutoya/money_chokinbako.png | ../assets/irasutoya/pose_atama_kakaeru_man_money.png ナレーター: 一人なら問題ない。でも全員が同時に節約すると、社会全体の売上が減り、給料が減る。減った給料からは、もう貯金できない。 [telop] 個人の正解 ≠ 社会の正解 | 2.8 ナレーター(驚き): 結果、みんなで節約したのに、社会全体の貯金は増えない。むしろ減ることさえある。これが「倹約のパラドックス」です。 [slide] 合成の誤謬 | 部分で正しいことが、全体でも正しいとは限らない [point] 一人が立てば、よく見える。全員が立てば、誰も見えない ナレーター: 論理学の言葉で「合成の{誤謬|ごびゅう}」。コンサートで一人が立ち上がれば、よく見える。でも全員が立ち上がったら、誰も見えなくなる。それと同じ構造です。 [point] 経済学ではこれを*合成の誤謬*と呼ぶ [point] 先駆けは1714年の『蜂の寓話』 ナレーター: ケインズはこの発想を、1714年の『蜂の{寓話|ぐうわ}』という本から引いています。一匹一匹が贅沢をやめた途端、蜂の巣全体が貧しくなった、という寓話です。 [slide] そして日本は、これを30年やった | 「失われた30年」の正体 [image] ../assets/irasutoya/money_market_bubble_hajikeru.png | 1990年代、バブル崩壊 ナレーター: ここからが本題です。1990年代、バブルが崩壊した日本。 ナレーター(困り): 会社は借金を返すために投資をやめた。家計は不安だから財布を閉じた。値下がりを待つから、さらに買わない。 [vs] 賑わう商店街=お金が回る | シャッター通り=お金が*止まる* | ../assets/irasutoya/shopping_syoutengai.png | ../assets/irasutoya/shutter_doori.png ナレーター: 一人ひとりは正しく行動した。でも全員が同時にやった。その結果が、シャッター通りです。 [chart] bar: 1995年=521, 2000年=535, 2005年=532, 2010年=505, 2015年=538, 2020年=539 | 日本の名目GDP(内閣府、概数) | 兆円 ナレーター: 数字で見ます。日本の名目{GDP|ジーディーピー}は、1995年におよそ521兆円。2020年はおよそ539兆円。25年間、ほぼ横ばいです。 ナレーター: 同じ期間に、アメリカは3倍近くになりました。 [image] ../assets/irasutoya/money_tansu_yokin.png | 家計の金融資産 およそ2,230兆円。半分近くが現金・預金 ナレーター: そして今、日本の家計が持つ金融資産はおよそ2,230兆円。その半分近くが、現金と預金のまま眠っています。 [chart] donut: *現金・預金*=1134, 株式・投信・保険など=1096 | 家計の金融資産 2,230兆円の内訳(日銀 資金循環 2024年末) | 兆円 [telop] 眠るお金を、動かしたい | 2.4 ナレーター: 国が「貯蓄から投資へ」と20年以上言い続ける理由。NISAで税金まで捨てて投資を勧める理由。それは、使われないお金を動かしたいからです。 [slide] ただし、ケインズが正しいとは限らない | 反対側の主張も知っておく ナレーター: ここで、反対側の意見も言っておきます。 [point] 貯めたお金は消えず、銀行を通じて企業の投資に回る ナレーター: 貯めたお金は消えるわけではなく、銀行を通じて企業の投資に回る。 [point] 人も工場もフル稼働のとき(完全雇用)は、節約は悪くない ナレーター: 人も工場もフル稼働しているときは、節約はむしろ健全だ。これが古典派と呼ばれる人たちの主張です。 [point] 2022年以降の日本は*物価高・供給不足*という見方もある [chart] bar: 2021年=-0.2, 2022年=2.3, 2023年=3.1, 2024年=2.5 | 消費者物価(生鮮食品除く)前年比(総務省) | % ナレーター(考え): 実際、2022年以降の日本は物価が2%から3%上がるインフレです。「お金が足りない」より「物が高い」局面。倹約のパラドックスが、そのまま当てはまるとは限りません。 [telop] 効くのは「不況のとき」だけ | 2.6 ナレーター: ケインズの主張が効くのは、モノが余って人が余っている、不況のとき。万能の法則ではない。ここは押さえておいてください。 [slide] じゃあ、あなたはどうするか | ここからは個人の見解です [image] ../assets/irasutoya/syourai_sekkei_man.png | まず生活防衛資金。そのうえで「使う」を設計する ナレーター: ここからは個人の見解です。 ナレーター: まず、生活費の3か月から6か月分は貯める。これは倹約のパラドックスより優先です。あなた一人の節約で日本は沈みませんし、あなたの生活は守れますから。 [vs] ケチ=減らすだけ | 太っ腹=*増やすために使う* | ../assets/irasutoya/money_kechi.png | ../assets/irasutoya/money_futoppara.png ナレーター(笑顔): そのうえで、お金を「減らさないもの」ではなく「回すもの」として見る。学び、健康、人との時間、そして投資。 ナレーター: 使い方を設計した人だけが、経済が回るとき、その果実を受け取れます。 [image] ../assets/irasutoya/money_toushi.png | 投資は「経済に参加する」こと ナレーター: 投資も同じです。株を買うとは、企業にお金を回し、経済の輪に入ること。 ナレーター: ケインズ自身が書いています。投資を動かすのは計算ではなく「アニマル・スピリット」だと。行動したい、という衝動のことです。 [quote] 経済学者『ケインズ』 | 長期的には、//我々はみな*死んでいる* | 『貨幣改革論』1923年 | ../assets/img/keynes_1929.jpg ナレーター: ケインズはこうも言いました。「長期的には、我々はみな死んでいる」。元の文脈は、経済学者への皮肉です。嵐の中で「いつか海は静まる」と言っても意味がない、と。 ナレーター(考え): でも私は、こう受け取っています。いつか使うお金の「いつか」は、来ない。貯めるだけの人生は、使う前に終わる。 [slide] まとめ | 倹約のパラドックス [point] あなたの支出は、*誰かの収入* [point] 一人の正解を全員がやると、社会の不正解になる [point] 効くのは不況のとき。今は反対側の主張も強い [point] 生活防衛資金が先。そのうえで「使う」「回す」を設計する [point] ※一般的な情報で、特定の金融商品を推奨するものではありません ナレーター: まとめです。あなたの支出は、誰かの収入。一人の正解を全員がやると、社会の不正解になる。効くのは不況のときだけで、今は反対側の主張も強い。 ナレーター: まず生活防衛資金。そのうえで、使い方と回し方を設計する。これは一般的な情報で、特定の金融商品をすすめるものではありません。 [telop] 貯める人生か、//回す人生か | 3.0 ナレーター(笑顔): あなたは、貯める人生と回す人生、どちらを選びますか。コメントで教えてください。 [wait] 0.6