1 00:00:01,000 --> 00:00:03,945 「金持ちになっても、幸せにはなれない」。 2 00:00:03,945 --> 00:00:12,717 書いたのは、1776年に資本主義の教科書『国富論』を書いた、アダム・スミス本人です。 3 00:00:12,817 --> 00:00:16,445 なぜ経済学の父が、そんなことを書いたのか。 4 00:00:16,445 --> 00:00:21,395 そして、それでも彼は「金持ちを目指せ」と言った。 5 00:00:21,395 --> 00:00:23,778 その理由が今日の本題です。 6 00:00:23,878 --> 00:00:27,925 最後に、お金の目標をどう立て直すかまで話します。 7 00:00:28,575 --> 00:00:33,995 アダム・スミス。1723年、スコットランド生まれ。 8 00:00:33,995 --> 00:00:37,398 グラスゴー大学で道徳哲学を教えた人です。 9 00:00:37,398 --> 00:00:45,360 1759年に『道徳感情論』、1776年に『国富論』を書きました。 10 00:00:45,610 --> 00:00:49,685 経済学の父と呼ばれますが、本業は道徳哲学。 11 00:00:49,685 --> 00:00:53,615 「人はなぜ他人に共感するのか」を考えた人です。 12 00:00:53,865 --> 00:01:00,170 有名な「見えざる手」という言葉は、2冊あわせて、たった2回しか出てきません。 13 00:01:00,170 --> 00:01:03,620 そのうち1回が、今日の話の中にあります。 14 00:01:04,520 --> 00:01:06,451 スミスが書いた寓話です。 15 00:01:06,451 --> 00:01:09,428 野心をもった貧しい男の息子がいました。 16 00:01:09,428 --> 00:01:12,846 彼は金持ちの暮らしを見て、こう思います。 17 00:01:13,346 --> 00:01:18,669 「あの豪邸と、馬車と、召使いさえ手に入れば、自分は満たされる」。 18 00:01:18,669 --> 00:01:22,386 そして一生を、そのための労働に費やします。 19 00:01:22,886 --> 00:01:26,919 老いて、ついに手に入れたとき。彼は気づきます。 20 00:01:26,919 --> 00:01:31,911 それらは「取るに足らない、便利さの道具」にすぎなかった。 21 00:01:31,911 --> 00:01:37,271 心の平穏は、貧しかった若いころより、むしろ失われていた。 22 00:01:37,371 --> 00:01:40,763 これが1759年に書かれた話です。 23 00:01:40,763 --> 00:01:46,805 SNSで他人の暮らしを見て走る、今の私たちと、構造は変わっていません。 24 00:01:47,705 --> 00:01:56,531 数字で見ます。日本の一人当たりの実質所得は、1958年からの30年で、およそ5倍になりました。 25 00:01:57,031 --> 00:02:01,587 ところが同じ期間、生活満足度の平均は、ほぼ横ばい。 26 00:02:01,587 --> 00:02:06,082 「イースタリンのパラドックス」と呼ばれる、有名な結果です。 27 00:02:06,582 --> 00:02:13,175 アメリカの研究では、日々の感情的な幸福は、年収およそ7万5,000ドルで頭打ち。 28 00:02:13,175 --> 00:02:15,121 そう結論づけられました。 29 00:02:15,371 --> 00:02:17,238 ただし反論もあります。 30 00:02:17,238 --> 00:02:22,977 2023年の共同研究では、多くの人では幸福は上がり続ける。 31 00:02:22,977 --> 00:02:28,525 頭打ちになるのは、最も不幸なおよそ2割だけ、と整理されました。 32 00:02:28,525 --> 00:02:31,463 お金が効く人と、効かない人がいる。 33 00:02:32,113 --> 00:02:34,780 ここが、スミスのすごいところです。 34 00:02:34,780 --> 00:02:37,618 彼は寓話のあとに、こう続けます。 35 00:02:37,618 --> 00:02:40,648 この錯覚こそが、人類を働かせた。 36 00:02:40,648 --> 00:02:46,071 土地を耕させ、都市を築かせ、学問と技術を進めさせた。 37 00:02:46,171 --> 00:02:50,673 そして、ここで「見えざる手」という言葉を使います。 38 00:02:50,673 --> 00:02:55,399 金持ちになりたいという個人の勘違いが、社会全体を豊かにする。 39 00:02:55,399 --> 00:02:58,508 だから、目指すこと自体は否定しません。 40 00:02:58,758 --> 00:03:01,948 もう一つ。スミスはこうも書いています。 41 00:03:01,948 --> 00:03:08,466 「健康で、借金がなく、良心に曇りのない人に、何を足せるというのか」。 42 00:03:08,466 --> 00:03:12,727 お金は、幸せを足すより、不幸を引くことに効く。 43 00:03:13,227 --> 00:03:15,471 ここからは個人の見解です。 44 00:03:15,971 --> 00:03:20,975 お金の目標を、「足す」から「引く」に書き換える。 45 00:03:20,975 --> 00:03:24,666 豪邸や年収ではなく、借金をゼロにする。 46 00:03:24,666 --> 00:03:27,141 生活防衛資金で不安を消す。 47 00:03:27,141 --> 00:03:29,023 我慢の回数を減らす。 48 00:03:29,523 --> 00:03:34,751 「引く」が終わったあとの余りは、モノではなく、時間と人に使う。 49 00:03:34,751 --> 00:03:41,177 寓話の息子が最後に欲しかったのは、豪邸ではなく、若いころの心の平穏でした。 50 00:03:41,677 --> 00:03:49,400 投資も同じです。「金持ちになる」ためではなく、老後の不安を引くための道具として、減らせる額で。 51 00:03:49,400 --> 00:03:53,618 目的が変わると、暴落のときの心構えも変わります。 52 00:03:54,118 --> 00:03:55,996 スミスの言葉で締めます。 53 00:03:55,996 --> 00:04:02,539 「健康で、借金がなく、良心に曇りのない人に、いったい何を足せるというのか」。 54 00:04:03,639 --> 00:04:07,309 まとめです。金持ちになっても幸せは足せない。 55 00:04:07,309 --> 00:04:10,083 でもその錯覚が社会を豊かにしてきた。 56 00:04:10,083 --> 00:04:13,081 だからお金は、足すより引くために使う。 57 00:04:13,081 --> 00:04:16,830 借金、不安、我慢を減らす。 58 00:04:16,930 --> 00:04:22,439 これは一般的な情報で、特定の金融商品をすすめるものではありません。 59 00:04:22,539 --> 00:04:25,707 あなたのお金は、何を引くためのものですか。 60 00:04:25,707 --> 00:04:27,653 コメントで教えてください。